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メッセージ☆ [おはなし]

風の子達が、笑う。
ぴゅ〜ぴゅ〜と声を上げて笑う。
そして、風の子達が動いた後の冷たい風が、私に纏わりつく。
あまりの寒さに、思わず身体を振るわせる。
そんな姿を、面白がる様に風の子達は笑う。

ぴゅ〜、ぴゅ〜。
ぴゅ〜、ぴゅ〜。

時々、私の歩みを邪魔する風の子達。

風に押し返されて困っている私を、風の子達は嬉しそうに笑う。

ぴゅ〜、ぴゅ〜。

その笑い声の中に混じって、誰かの話し声がした。

しかし、人影はない。
見上げた空には、木の枝が、冬の澄み切った青空を遮る様に枝をのばしている。

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風の子達は、その枝の間をスルスルとくぐり抜けながら、楽しそうに飛び交う。

気のせいだろうか。

何となく木が、そんな風の子達を 迷惑そうに思っていると感じるのは。

急に、風が止み風の子達の声が消えた。
木の気持ちが通じたのだろうか。
周りに、静けさが漂う。

すると、また誰かの声が聞こえて来た。
今度は、はっきりと。

「こんにちは。」

私は思わず「誰?」と聞くと、「あなたは、私の声が聞こえるの?」と返事が返って来た。

「ええ。でも、あなたはどこにいるの?」
「あら、私はさっきからあなたの目の前にいるわ。」
「私の目の前?」
「そうよ。さっきからずっと。あなたが私に気づいてくれるのを待っていたんだけど、あの風の子達がうるさくて、私の声があなたに聞こえなかった様だけど。」

と言われても、私の目の前にあるのは・・・・人ではなく「ただの木」。

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戸惑っている私に、「あなた、今、木が話しかけるなんて信じられないと思っているでしょ?」と、木は言った。
私は、正直に「勿論。」と答えた。

すると、「そう、人間は目に見えない事しか信じないし喜ばない。見えても、醜いものには目を向けないし見ないフリをするのよ。」と言った。

私は「そんな事ないわ。そんな事を言ったら、随分自分勝手みたいじゃない。」と、すこし怒った様に言うと、木は・・・・

「あら、そうかしら? 私は、ずっとここを通る人に声をかけたけど、私の声に返事をしてくれたのは、あなただけ。後は皆、私の声に聞こえないフリをして通り過ぎて行ったわ。」

「それに・・・・」と、木はちょっと言葉を止めてから、思い切った様に話を続けた。


「人間は、本当に自分勝手。何故なら・・・・

私には、春になったら新しい息吹が顔を出す。そして蕾となり花を咲かせる。すると人々は、その姿を誰もが目を輝かせ喜ぶ。

夏、私の枝々には青々とした葉が生茂り、暑い太陽を遮ると、そこに出来た木陰で人々は汗を拭き、葉と葉の間を通り抜けてくる風の涼しさに感謝する。

そして、秋になると人々は私の葉の色が変わり行く姿を待ちわびる。色とりどに変身した葉の美しさに溜め息を付き感激する。

でも、冬になり私から葉が落ちて、何も無くなってしまうと、誰も私を見ようとはしなくなる。

何て、寂しいことでしょう。」と言って、木はポロポロと泣き始めた。

すると、それまで木の話を一緒に聞いていたのか、周りの木達までも、「そうよ。そうよ。」と泣き始めたからさぁ大変。

私は「泣かないで!!」と、慌てて周りの木達の気持ちを沈めようと、1本1本の木に向かって声をかけた。
目を向けた木は、色々な形をしている事に気付いた。

大きな木、小さな木。
細い木、太い木。

肌がとても滑らかな木。
今は、枝先がツンツンと針の様になっている姿を見せ、とてもピリピリした感じを受けるけれど、確か淡ピンク色でふわふわとした花を咲かせていたはず。
繊細な花を咲かせる時期には、決して分からない姿。

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枝が、太くしっかりした木。
この木には、とても大きな葉を付けていたはず。
葉を支える為には、こんなにしっかりした枝ではないとダメなのね。

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枝先が、曲がって伸びている木。
風雨から花や葉が飛ばされない様、必死で耐えて来たのだろう。
自分の体がこんなになっても、大切な物を守り抜いた姿だ。

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枝が、木の先端で広がっている木。
青い空が海の様で、そこに広がる枝は、まるでサンゴの様に見えた。

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そして、この木はなんと言うのだろう。
真っすぐと空に向かって伸びて、とても気持ちいい。

P1121073.JPG

今、1本1本の木の姿を目にしていて私は思った。
花や葉を付けている季節の美しさもあるが、本当の美しい姿は、全てがなくなった冬のこの季節なのではないかと。
同じ姿は1本もない。
それぞれが作り上げて来た姿が見れるこの季節。

私に、話かけて来たのは、きっと本当の姿を誰かに見て知って欲しかったのだ。
「花や葉を落とした木は、ただの木ではない」と言う事を。


その時、「ありがとう」と言う言葉が聞こえた。
振り返ると、私に話かけた木が微笑んでいた。

そして、私も「ありがとう」と言った。


それは、人間の世界でも同じ事が言える事を、私は教わった様な気がしたからだ。
本当の大切な事は、どこにあるかと言う事を。


ありがとう。







*********************************************************************************************************

昨年の暮れ、何気なく空を見上げた時、色々な姿の木々が目に入り、今迄気づかなかったというか考えても見なかった様な事が心に湧いてきました。
その気持ちを、下手ながらも何か言葉にしてみようと書いてみたのですが、なかなか思った気持ちを言葉に表すのって難しいですね。

でも、私の写真や話から、私が伝えたい事とは違っていても、読んだ方々が何かに気付いてくれたり感じ取って下さったら、それはとても素敵な事だと思います。

まずは、最後迄読んで下さった方々に感謝致します。

ありがとうございます。(^^)







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うさこ

2枚目のお写真にハッとしました(^^)

本当にきれいですね♪

わたしも 1つ思い出しました。それは駅の近くにある桜の木
何気ない場所なのですが、桜の季節はとてもきれいなの
秋も紅葉してて。。
そして、冬
つい見ちゃうけど なーんにもついていない笑

でもMieさんのお話を拝読して…

わたしを見てって言ってる気がしました

(P.S. クマのね、ちょっと(かなり)下ネタなの(;´д`)ゞ!スミマセン(-o-;))
by うさこ (2013-01-21 06:49) 

ナビパ

そっとそして優しく素敵なお話です。
きっと春になると葉がつき微笑みかけてくれることでしょう。^ ^
by ナビパ (2013-01-21 07:43) 

Mie

うさこさん

読んで頂いて、ありがとうございます。

「見て」って感じましたか。
お話を聞いただけでも、確かに「見て」って言ってる様に思います。(^^)

綺麗な花や葉を付けている時って、黙っていても注目浴びるのに、何もないとホントに目を向けなくなりますよね。

でも、人間も同じですけど、何も着飾らない素の姿ほど正直で素敵な姿はないです。

本当の姿を見せるのって勇気がいるけれど、でも本当の自分を知って欲しくはないですか?
なんてね。(^^)

R15の理由は、そうだったんですか!
了解です。(^^)





by Mie (2013-01-21 16:10) 

Mie

ナビバさん

読んで頂いて、ありがとうございます。

全てを無くした木は、この季節寒いだけではなく、寂しくもあると思えるんです。
そんな季節だからこそ、そんな自分に気付いてもらえて応援されたりしたら、きっと春になったら素敵な花を咲かせて、皆に喜んで貰おうって頑張ってくれそうですよね。(^^)


by Mie (2013-01-21 16:16) 

Rita

こんばんは。
そうですね、木さんの気持ちがわかるような気がします^^
冬になると、誰も見てくれなくて寂しくなるんですよね。
Mieさんとお話しできて、木さん喜んでいますね(∩.∩)
素敵なおはなしを聞かせて下さって、ありがとうございました☆
by Rita (2013-01-21 23:14) 

メグちゃん

素敵なお話でした。
あの青空と木々のお話は、沈んでいる私の心を持ち上げてくれました。
私は自然の中で生きている木や花が大好きです。
季節の移り変わりに感謝しています。
Mieさんのお話のとおり、木々の四季に人間はとても癒されて生きているのですよね。
大地から鋭気を頂き、自然と共生して暮らしています。

文章と写真がとってもいいです、何だか元気をもらいました。
Mieさんまた素敵なおはなし聞かせてくださいね。

by メグちゃん (2013-01-22 00:36) 

Mie

Ritaさん

読んで下さって、ありがとうございます。
数年前、自然の大切さをしみじみと実感する出来事(大した事ではありませんが)がありました。
そして、それから間もなく、今住んでいる所へ引っ越して来たんですが、ここは自然が多く、お散歩しているだけで、色々な事に気付かせてもらっています。
そんな今、Ritaさんのブログを最近読ませて頂く様になり、胸が苦しくなってきます。
苦しみは、人間や動物だけを襲っているわけではなく、自然にも襲いかかっていると言う事がヒシヒシと感じて来るからです。
確かに、テレビからの映像や話から知っていましたが、実際にその土地に住まわれている方の話しは、衝撃的です。

私に何が出来るか・・・・わかりません。
でも、Ritaさん達の声をしっかり聞いていきたいと思っています。
これからも、私達にRitaさん達の声を聞かせてください。




by Mie (2013-01-22 08:34) 

Mie

メグちゃんさん

読んで頂いて、ありがとうございます。
私のヘタクソなお話を、褒めいて頂いて嬉しいです。
そう。メグちゃんさんはお花や植物が本当にお好きですよね。
そして、その植物をとても愛情込めて育てていらっしゃる。
私は、いつもそんなメグちゃんさんを尊敬しています。
とても、心が優しいメグちゃんさんだから、手を抜く事も出来ず疲れて、そんな自分を責めてしまわれるのかな?なんて・・・・

冬と言う季節は、寒いと言う事もあって身体を丸めて下を向きがち、それと周りから「色」というものが無くなるので、ますます上を向かなくなります。

でも、空が青く澄み切っているのは「冬」なんですよね。
「青」が、一番綺麗な季節なんです。
その青のなかに浮かぶ木の枝は、他の季節には絶対見られない美しさがあります。


辛い時、悲しい時、疲れた時、そんな時こそ大きく深呼吸しながら顔を上げて、空を見て下さい。

気分がリフレッシュされるはずですよ!!(^^)

私は、散歩中にフッと空を見上げるんですが、冬の空はとっても綺麗で寒さも心地よく感じたりします。
たまに、「ボーッ」とし過ぎてKenに「ママっ!!」て、呼ばれちゃう事がありますけどね。(笑)

メグちゃんさんも、お散歩の時公園のベンチに座って、たまにメグちゃんを抱っこしながら、空を眺めてみてはいかがでしょう。

メグちゃんの温もりを感じなから見る青空は、ほっこりとして幸せな気分になれると思いますよ。(^^)


by Mie (2013-01-22 08:58) 

SHINOBU

公園なんかを散歩してる時に、木々を見てると、上にすくっと伸びる姿が、なんか私自身にエネルギーをもらえたような気がします。

自然からのエネルギー、季節ごとに感じる心の余裕が欲しいです!!ヽ(´▽`)/
by SHINOBU (2013-01-22 22:24) 

わんわん

Mieさん、とっても素敵なお話をありがとうございます^^
冬の木ってとても淋しげですよね。。。でもそれって木の本当の美しさなんですね〜何もつけてない裸の美しさ。。。人間も飾らない美しさってありますよね。。。それと同じかな?
確かに青い空が海だとすると広がる枝は珊瑚礁ですね!!素敵です〜
Mieさんの世界が広がってます(*^-^)
by わんわん (2013-01-22 22:58) 

Mie

SHINOBUさん

読んで頂いて、ありがとうございます。
コメント頂きながら、お返事が遅くなってごめんなさい。
実は、何年かぶりに「風邪」を引きまして、ずっと寝ていました。
今日も、あまり良いわけではないのですが、取り敢えずPCを開く気持になれた次第です。(^^)

自然の恵みは、私達の生活にとても密着して存在するのですが、分かっている様でもなかなか目を向けないものですよね。
向けないだけでも悲しいのに、その恵みを無神経に取り払う事ばかり考えて・・・・本当に悲しいですね。

数少なくなって来た木々に、感謝をしていきたいものです。(^^)


by Mie (2013-01-24 09:25) 

Mie

わんわんさん

読んで頂きまして、ありがとうございます。
風邪をひいて、しばらくPCを開く事が出来ず、お返事が遅くなってすみません。(^^;)

このお話もお散歩中に浮かびました。
というか、枯れ木になった姿をじっくりみていたら、花が咲いている時や葉が生茂っている時には気づかなかった木の性格が見えた様な気がしたんです。
同じ、種類の木でも同じ枝の張り方はしていない。
それを私は「木の性格」と捉えて、その日から色んな木を見ていったら、このお話になりました。

私の話しを読んで、一人でも自然と言うものにちょっとだけでも目を向けて頂けると嬉しいです。(^^)



by Mie (2013-01-24 09:36) 

wonwonwon

とても感慨深く読ませていただきましたぁ
心に沁みこむお話しですね!
(*^_^*)
by wonwonwon (2013-01-25 16:07) 

Mie

wonwonwonさん

ご無沙汰しています。
おはなし、読んで頂いてありがとうございます。
風邪を引き、一度PCから離れ回復したと思ってPCへ戻って来たら。またもや具合が悪くなりで。お返事遅くなってすみませんでした。(^^;)

忙しい日々の中で、分かっていると思っている様な事でも忘れがちになります。
そんな時、フッと顔を上げて見ると気付かなかった事や忘れていた事を思い出させてくれる事ってありますよね。(^^)


by Mie (2013-01-26 17:14) 

ふゆもえ

あんまり寒いから、俯いて見上げるコトなく歩いてました。
でも、寒いのは人間だけじゃなく。
こうして木々たちも寂しく耐えていたんですね。
思いもしなかったお話を、どうもありがとうございました^^
by ふゆもえ (2013-01-28 13:15) 

Mie

ふゆもえさん

読んで頂いて、ありがとうございます。
寒いと、どうしても俯いて歩いてしまいますよね。
私も、Kenのお散歩でもないとまわりをキョロキョロ見たり、ボォ〜っと空なんて眺める事もないです。
飼い主がボォ〜っと空を眺めている足元で、犬が必死にお友達のお手紙を読みあさっている姿、端からみているとすっごく変な光景ですよね。(笑)

人間は、人間の心を読もうとすることはあっても、木や植物の心を読もうとはなかなかしないですものね。
機会があったら、お庭の木に話かけて上げて下さいね。(^^)


by Mie (2013-01-28 21:52) 

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