SSブログ

想い出、あずかります☆ [読書]

「思い出」
人生を送る中で、色々な出来事が起こります。
その出来事は、時の流れと共に「思い出」というものに変わります。
一口に「思い出」と言っても、その中身は「楽しい事」であったり「嬉しい事」「悲しい事」「辛い事」「苦しい事」色々。

「楽しい事」や「嬉しい事」の思い出は、時々思い出の引き出しを開いて懐かしんだりします。
反対に「悲しい思い出」や「辛い思い出」など悪い思い出は、心の奥底に沈めて、出来るならば思い出したくない。

そういう悪い思い出って、自分の中では思い出したくなくても、時として突然心の奥底から飛び出して来て、心を痛めたりするものです。
でも、そんな悪い思い出を自分の心の中から消してしまう事が出来たら、どんなに気持ちが楽になることでしょう。
だけど、良い思い出も悪い思い出も、全てが私の人生・・・・なんですよね。


さて、話が逸れてしまうのですが、昔娘が一番なりたかった者は、「魔女」「魔法使い」でした。
何に魅力を感じたのかよくわからないのですが、3歳の時、生まれて初めてのハロウィンで「何に仮装する?」って聞いたら、娘はシンデレラでも白雪姫でもアリスでもなく、「魔法使いになりたい」と言ったんです。
パパが魔法使いのトンガリ帽子やホウキを作り、ママがマントなど衣装を作り、娘は望み通りの「魔法使い」になったのです。

その後も、ホウキに跨り空を飛びたいと言うたびに、「飛べ」の言葉で娘を空中へ飛ばす。

子供にとって、魔法使いってちょっと恐い存在でもあるけれど、その反面魔法で色々なことが出来るその存在にとても興味があり魅力があるのでしょうか?

そんな子供達が、憧れの魔法使いに会えて、魔法使いからお金を貸してくれるという話を聞いたら、ちょっと怖いけれど会ってみたくなる。
況してや、お金を貸す代わりに、自分の思い出を魔法使いに預けるだけなんて、こんなにいい話は無いのです。
私が子供の頃に、そんな魔法使いがいて、辛かったり悲しかったりした思い出を預かってくれるなら・・・ちょっと恐いけど預けに行くかもしれない。
だって、嫌な思い出が自分の中からなくなって、それだけでも嬉しいのに、その思い出がお金になるなんて、こんな美味しい話は無いのです。
でも、実際にはそんな魔法使いはいません・・・・

と、思ったらいたのです。
子供達の思い出と引き換えに、お金を貸してくれる魔法使いが。

そこは、ある海辺の岸壁の下に「おもいで質店」があります。
店主は、魔法使い。
子供達には、この「おもいで質店」が見えるけれど、大人には決してわからない。
ここでは、子供達の話す思い出を聞いて、値段をつけお金を貸してくれる。
預けた思い出は、魔法使いに預けた時点で頭の中から消え去ってしまう。
そして、20歳になるまで借りたお金を返しに行けば、預かっていた思い出は返してもらえます。
でも、20歳までにお金を返しに来なければ、一生思い出は帰りません。
何故なら「おもいで質屋」へは、20歳の誕生日を迎えると二度とこりお店へ行く事ができなくなるから。
そして、「おもいで質店」の存在も頭の中から消えてしまうのです。

子供達は、毎日誰かしらこの「おもいで質屋」へ出向き、思い出を語りお金を手にしていました。
そして、四年生になる遥斗は兄の大和に連れられて「おもいで質屋」デビュー。
彼は、ゲームのソフトが欲しくて、思い出を預けに来たのです。
預けた思い出は、彼の生まれて初めての思い出。
魔法使いが、一番高い値を付けるのは、人生の中で一番最初の思い出だと言われたから。
というように、子供達が預ける思い出は色々ありますが、とても辛い思い出を預ける女の子もいるのです。
学校でいじめにあい、そのいじめの思い出を毎日預けにくる。
彼女は、お金が欲しいわけではなく、いじめの思い出を預ける事で明日も元気に学校へ行くために。

でも、子供の中には子供の思い出を買い取る魔法使いを良く思わ無い子供もいて、ある時中学校の新聞部の部長を務める永澤里華が、新聞の記事を書くという事で、「おもいで質屋」を訪れる。

里華は、子供の思い出をお金と引き換えにする魔法使いに対して、決して良い印象を持っていなかったが、何故か魔法使いに惹かれて行く。
又、魔法使いも、彼女が店に訪れるが決して自分の思い出を売る事のない事を面白く思っていた。
そんな二人が、次第に相手の事が良くわかってくる。

そして、里華が20歳の誕生日を迎える前日。
彼女は、「おもいで質屋」を訪れる。
誕生日を迎えたら、この「おもいで質屋」の事も「魔法使い」の事も全て自分の頭の中から無くなってしまうから。

悲しいですよね。
素敵な思い出が消えてしまうって。
というより、自分の意思ではなく勝手に消されてしまうんですから。


このお話は、「思い出 あずかります」という、吉野万理子さんの本です。

IMG_1911.JPG
(本屋さんになかったものですから、kindieで購入してしまいましたが、表紙はこんな感じかと思います。)
IMG_1909.JPG



この本を知ったのは、昨年出版された「小泉今日子 書評集」という本の中で知りました。
小泉今日子さんが、毎週日曜日の読売新聞の中で図書委員を勤め10年間色んな本の書評をしてきました。
その、10年間に書いた本の書評をまとめた本です。


IMG_1903.JPG


小泉今日子さんの読まれた本の中には、私自身も読んだ本が数冊あったりして、同じ本を読んで小泉今日子さんはどう書評しているのか読むのも楽しかったんですけど、何よりも小泉今日子さんの文章力が素晴らしくて驚きました。
元々、ご家族が読書をされるお家で、本に恵まれた環境にあったようです。
本を読む方は、やっぱり文章力もあるんですね。
どの書評を読んでも、「読んでみたいなぁ〜」と思ってしまいましたが、その中でも「想い出あずかります」は、書評の最後にどうしても確認したくなってしまうような締めくくりをされていて、「確認しなくちゃ!!」なんて思い読んでしまいました。(笑)


「魔法使い」が出てくる話だと、子供ぽいと思われるかもしれませんが、そんな感じではありません。
世の中には、ルールが沢山あります。
それらのルールは、守らなくてはいけ無い事・・・・
でも、そのルールは時としてというか、時の流れとか状況に変化があれば、見直し変えてもよいのではないか。
でも、魔法使いは変えない。
そして、何故思い出を質種にするのか。
いつも、感情を見せず、というか見せない様にしている理由。

この本を読んでいると、それらの疑問が解き明かされ、魔法使いの本当の心が見えて来る。
果たして、里華も20歳の誕生日を迎えた時、「おもいで質屋」の記憶を無くすのか。
とても面白い本でしたので、よろしければ読んでみてください。(^_^)☆


最後に、「思い出」は良い思い出も悪い思い出も、全て自分の人生ですから、手放しちゃだめですよね。(^_^)☆









この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。